「敗者のゲーム」(日本経済新聞出版社)
著者:チャールズ・エリス
訳者:鹿毛 雄二
本書は投資の世界ではファンの多い名著です。特にインデックス投資家にとってはバイブルといってよいのではないでしょうか。
私が投資で一番好きな「稲妻が輝く瞬間に市場に居合わせなければならない」という名言も本書に記されたものです。
今の株式市場は勝者のゲームではなく、敗者のゲームになっています。これはどういうことなのか。敗者のゲームで勝ち残るにはどうすればよいのか。
みなさんもぜひこの本を手に取り、投資で勝ち残る術を身につけてください。
本書はこんな人におすすめ
- 投資を始めたいけど、何に投資してよいかわからない人
- 投資で勝つ方法を知りたい人
- なぜインデックス投資がよいのかを知りたい人
本書を読むメリット
- 投資で成功を収めるために必要な知識が得られます。
- どのような行動が個人投資家を敗者にするのかがわかります。
- 株価暴落時の不安を克服するマインドが身に付きます。
本書の内容
第一部 資産運用でまず押さえるべきこと
本書のはじめは、機関投資家とインデックスファンドの運用成績を比較し、プロでも市場平均を上回ることがいかに難しいかを説明しています。その理由は、機関投資家の活動そのものが市場であり、自分自身に勝つことはできないからです。
能力の高い機関投資家がしのぎを削り、質の高いサービスを提供するようになった結果、資産運用が勝者のゲームから敗者のゲームになったと著者はいいます。
- 勝者のゲーム
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- 自らの素晴らしい行動によって勝者となる
- 敗者のゲーム
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- 自らのミスによって敗者となる
株式市場はもはや素晴らしい行動で他者に打ち勝つことは難しく、ミスを犯した者が敗者となってしまうのです。
例えば株式市場が活況のときには「今こそ買うべき」、暴落時には「全て売ってしまおう」というように市場に振り回されてしまうと、多くの場合は失敗に終わります。
プロの投資家たちは他の投資家のミスを虎視眈々と狙っています。個人投資家の多くが勝てないのはミスを犯すからで、それが敗者のゲームとなるのです。
個人投資家が敗者のゲームに打ち勝つにはどうすればよいのか
資産運用においては市場タイミングに賭けるべきではありません。その理由は、ベストなタイミングを逃すことでリターンを失ってしまうからです。どれくらいのリターンを失うか、その衝撃の事実はぜひ本書を読んで確かめてください。
激しい下落相場でパニック売りをしてしまうことは、最大の上場相場に参加する機会を自ら放棄することであると、本書は訴えます。
そして我々に名言を残してくれます。
稲妻が輝く瞬間に市場に居合わせなければならない
これは本当に素晴らしい教訓です。インデックス投資家に株価暴落を乗り切る勇気を与えてくれます。
第二部 運用を少し理論的に見てみよう
投資における時間の重要性、つまり長期投資のメリットについて説明されています。運用期間が長ければ長いほど、ポートフォリオ全体の収益率が平均収益率に近づくとのことです。インデックス投資家が将来のリターンを期待して長期運用できるのも、この考えに基づくものです。
なぜ長期運用がよいのか
続いて株式投資のリスクに関する話があります。
投資家がさらされるリスクは三つあり、そのうちの一つは回避できないリスク、二つは回避あるいは排除できるリスクとのことです。どのようにこれらのリスクを回避・排除していけばよいのか。それはポートフォリオの組み方が肝になります。
リスクを回避あるい排除するにはどうすればよいのか
本書ではポートフォリオの組み方についての解説とともに、ポートフォリオの守り方についても解説されています。
周りがパニックに陥る状況で、自分だけ冷静でいるのは難しいことです。その結果、間違った行動を起こしてしまうものです。
「バーゲンセールのときには買いたくない。値段が上がったら買おう」なんていう消費者はいないのに、投資家はなぜかこのような行動をとってしまいますね。これこそ敗者のゲームです。
このようなリスクを排除するためには、運用基本方針を決め、投資戦略を明文化することが重要であるとのことです。
第三部 個人投資家への助言
第三部は投資家が一生を通じて運用に成功するためのアドバイスとなっています。生涯にわたる資産運用に取り組んでいくためには重要なことですね。
一生を通じて資産運用に成功するために必要な知識
本書にまとめられた「個人投資家のための十戒」をいくつか紹介します。
- 貯蓄すること。
- 相場の先行きに賭けてはいけない。
- 自分の住宅を投資資産と考えてはいけない。
- 証券会社の担当者に気をつけなさい。
この十戒は、投資家が意思決定を行ううえで役に立つことでしょう。
次に、投資信託の選び方について説明されています。投資信託を選ぶときに軽視してはいけないのが手数料です。アクティブ運用の手数料は非常に高いと認識する必要があります。
アクティブ運用の投資信託は、手数料を差し引いてなお市場平均を上回る成績を上げる必要があります。そのような投資信託は確かに存在します。しかし、それを事前に選別する確かな方法はないということです。
投資信託の選び方
本書はこの後、生涯を通じた投資プランの立て方、インフレへの対応の仕方、長生きリスクへの対応法なども解説しています。まさに一生を通じて運用を行うための知識を集約した一冊となっています。
最後に、終章「敗者のゲームに勝つために」で紹介されているウォーレン・バフェットの言葉を載せておきましょう。
投資は単純である。しかし、単純なことを実行するのが難しい。
投資で成功するために、複雑な行動をとる必要はありません。マーケットの上昇・下落に振り回されてじたばたしなければ、「敗者のゲーム」に勝つことは簡単であると著者は述べています。
非常に奥深い言葉です。これが投資の真理なのかもしれませんね。
本書を読んだ感想
とても濃い内容の本で、得るものがたくさんありました。また、私の投資人生に大きな影響を与えた一冊です。
先にも書きましたが、「稲妻が輝く瞬間に市場に居合わせなければならない」という名言は、株価暴落時にも冷静に対処するための心の支えとなっています。
本書の内容は米国の事情や法制度に則った内容も多く、日本の事情とは合わない部分もあります。また、初心者には難しい内容もあるでしょう。
しかし、多くの部分は資産運用の真理を述べたもので、どこの国でも、いつの時代でも枯れることのない知識を学ぶことができます。
中上級者にも有益な内容で、生涯を通じて何度も読み返したいと思いました。
まとめ
資産運用に失敗しない知識がつまった「敗者のゲーム」を紹介しました。
敗者のゲームではミスを犯さないことが勝者への道です。そのためにはどのような行動をとればよいのか。本書を読むことで、投資で成功するために必要な知識を身につけることができます。
あなたもぜひ本書を読んでみてください。それが成功につながれば幸いです。
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