株式投資にはさまざまなアノマリーが存在します。アノマリーとは、論理的な確証はないものの、過去の値動きから経験的に観測される規則性のことです。
たとえば、ウォール街の相場格言として有名な「Sell in May(5月に売り抜けろ)」もアノマリーの1つです。米国株では株価が5月にピークをつけて、その後は9月にかけて下落しやすい傾向があることを示唆しています。
このようなアノマリーを、論理的ではないと無視することもできますが、投資のパフォーマンスを改善できるのであれば、利用してみたいものです。
そこで今回、アメリカ大統領選挙にまつわるアノマリーを取り上げ、実際にどの程度の規則性があるのかを検証しました。
本記事を読めば、4年ごとに行われるアメリカ大統領選挙のタイミングを株式投資に活かす方法がわかります。ぜひ参考にしてください。
アメリカ大統領選挙にまつわるアノマリーとは
米国の大統領選挙は4年ごとに行われますが、その2年前に中間選挙というものがあります。そして、米国の株式市場には「中間選挙の翌年に株価が上昇しやすい」という興味深いアノマリーが存在します。
本記事では、S&P500の実際のデータを用いて、この大統領選挙にまつわるアノマリーを検証していきたいと思います。
検証方法は、直近の過去20回の大統領選挙(第40代~第59第)における中間選挙の年、中間選挙の翌年、本選挙の年、本選挙翌年でS&P500のリターンを調べ、この4年サイクルの中に規則性が見られるかを確認します。
ちなみに、第40代~第59第のアメリカ合衆国大統領は以下となっています。
代 | 年 | 名前 | 政党 |
---|---|---|---|
第40代 | 1944 | フランクリン・ルーズベルト | 民主党 |
第41代 | 1948 | ハリー・トルーマン | 民主党 |
第42代 | 1952 | ドワイト・アイゼンハワー | 共和党 |
第43代 | 1956 | ドワイト・アイゼンハワー | 共和党 |
第44代 | 1960 | ジョン・ケネディ | 民主党 |
第45代 | 1964 | リンドン・ジョンソン | 民主党 |
第46代 | 1968 | リチャード・ニクソン | 共和党 |
第47代 | 1972 | リチャード・ニクソン | 共和党 |
第48代 | 1976 | ジミー・カーター | 民主党 |
第49代 | 1980 | ロナルド・レーガン | 共和党 |
第50代 | 1984 | ロナルド・レーガン | 共和党 |
第51代 | 1988 | ジョージ・H・W・ブッシュ | 共和党 |
第52代 | 1992 | ビル・クリントン | 民主党 |
第53代 | 1996 | ビル・クリントン | 民主党 |
第54代 | 2000 | ジョージ・W・ブッシュ | 共和党 |
第55代 | 2004 | ジョージ・W・ブッシュ | 共和党 |
第56代 | 2008 | バラク・オバマ | 民主党 |
第57代 | 2012 | バラク・オバマ | 民主党 |
第58代 | 2016 | ドナルド・トランプ | 共和党 |
第59代 | 2020 | ジョー・バイデン | 民主党 |
S&P500の株価でアノマリーを検証
第40回アメリカ大統領選挙は、1942年が中間選挙、1944年が本選挙となっています。そこで、1942年から4年サイクルでS&P500のリターン(騰落率)をまとめると、以下の表のようになります。
中間選挙の年 | 中間選挙翌年 | 本選挙の年 | 本選挙翌年 | ||||
1942年 | 11.66% | 1943年 | 18.96% | 1944年 | 13.89% | 1945年 | 30.53% |
1946年 | -11.76% | 1947年 | 0.20% | 1948年 | -1.04% | 1949年 | 10.85% |
1950年 | 22.51% | 1951年 | 14.44% | 1952年 | 11.64% | 1953年 | -6.52% |
1954年 | 44.21% | 1955年 | 23.76% | 1956年 | 3.34% | 1957年 | -13.44% |
1958年 | 36.90% | 1959年 | 8.03% | 1960年 | -3.00% | 1961年 | 24.28% |
1962年 | -11.81% | 1963年 | 18.89% | 1964年 | 12.97% | 1965年 | 9.06% |
1966年 | -13.09% | 1967年 | 20.09% | 1968年 | 7.66% | 1969年 | -11.36% |
1970年 | 0.10% | 1971年 | 10.79% | 1972年 | 15.63% | 1973年 | -17.37% |
1974年 | -29.72% | 1975年 | 31.38% | 1976年 | 19.15% | 1977年 | -11.50% |
1978年 | 1.06% | 1979年 | 12.31% | 1980年 | 25.77% | 1981年 | -9.73% |
1982年 | 14.76% | 1983年 | 17.26% | 1984年 | 1.40% | 1985年 | 26.36% |
1986年 | 14.62% | 1987年 | 2.03% | 1988年 | 12.39% | 1989年 | 27.25% |
1990年 | -6.56% | 1991年 | 26.31% | 1992年 | 4.48% | 1993年 | 7.06% |
1994年 | -1.55% | 1995年 | 34.13% | 1996年 | 20.26% | 1997年 | 31.01% |
1998年 | 26.67% | 1999年 | 19.53% | 2000年 | -10.14% | 2001年 | -13.04% |
2002年 | -23.37% | 2003年 | 26.38% | 2004年 | 8.99% | 2005年 | 3.00% |
2006年 | 13.62% | 2007年 | 3.55% | 2008年 | -38.47% | 2009年 | 23.49% |
2010年 | 12.64% | 2011年 | -0.002% | 2012年 | 13.29% | 2013年 | 29.60% |
2014年 | 11.54% | 2015年 | -0.73% | 2016年 | 9.84% | 2017年 | 18.74% |
2018年 | -6.59% | 2019年 | 30.43% | 2020年 | 15.76% | 2021年 | 26.60% |
そして、「中間選挙の年」「中間選挙翌年」「本選挙の年」「本選挙翌年」ごとに、それぞれ平均リターンとプラスリターンの回数、マイナスリターンの回数をまとめると以下となります。
中間選挙の年 | 中間選挙翌年 | 本選挙の年 | 本選挙翌年 | |
---|---|---|---|---|
平均リターン | 5.29% | 15.89% | 7.19% | 9.24% |
プラスリターンの回数 | 12 | 18 | 16 | 13 |
マイナスリターンの回数 | 8 | 2 | 4 | 7 |
この表から、中間選挙翌年のパフォーマンスが突出してよいことが確認できます。しかも、今回集計した期間でマイナスリターンとなったのは2回しかありません。勝率が90%という驚きの結果です。この結果は投資戦略に取り入れる価値があるのではないでしょうか。
一方、中間選挙の年はパフォーマンスが最も悪くなっています。リターンは中間選挙翌年の約1/3しかありません。
本記事は2023年4月に執筆していますが、昨年の2022年は中間選挙の年であり、S&P500のリターンは-19.64%でした.。このパフォーマンスの悪さも、大統領選挙のアノマリーが影響しているのかもしれません。
以上の結果から、中間選挙の年に値下がったタイミングで仕込んでおくことで、その翌年に大きく株価が上昇し、高いリターンが得られる可能性があります。
次に、中間選挙の年がマイナスリターンだった場合のデータだけを抽出し、翌年の平均リターンを計算してみました。
中間選挙の年 | 中間選挙翌年 | ||
---|---|---|---|
1946年 | -11.76% | 1947年 | 0.20% |
1962年 | -11.81% | 1963年 | 18.89% |
1966年 | -13.09% | 1967年 | 20.09% |
1974年 | -29.72% | 1975年 | 31.38% |
1990年 | -6.56% | 1991年 | 26.31% |
1994年 | -1.55% | 1995年 | 34.13% |
2002年 | -23.37% | 2003年 | 26.38% |
2018年 | -6.59% | 2019年 | 30.43% |
平均リターン | -13.06% | 平均リターン | 23.48% |
中間選挙の年がマイナスリターンだった場合、その翌年は大幅に反発することが多く、平均リターンは何と23.48%にもなっています。この結果を考えると、2023年の米国株は大きく上昇するのかもしれません。
今後の大統領選挙のスケジュールは以下となっていますので、これからの投資戦略にご活用ください。(下表中の平均リターンはS&P500の1942年~2021年の結果です。)
中間選挙の年 | 中間選挙翌年 | 本選挙の年 | 本選挙翌年 | |
---|---|---|---|---|
第60代 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
第61代 | 2026年 | 2027年 | 2028年 | 2029年 |
平均リターン | 5.29% | 15.89% | 7.19% | 9.24% |
まとめ
本記事では、アメリカ大統領選挙にまつわるアノマリーについて、S&P500の実際のデータを用いて検証しました。
「予備選挙の年」「予備選挙翌年」「本選挙の年」「本選挙翌年」の4年サイクルで平均リターンを調べたところ、最もパフォーマンスがよいのは「予備選挙翌年」であることがわかりました。その平均リターンは15.89%、勝率は90%にもなり、「中間選挙の翌年に株価が上昇しやすい」というアノマリーに一致する結果となりました。
また、中間選挙の年がマイナスリターンだった場合に限定すると、その翌年の平均リターンはさらによく、23.48%にもなることがわかりました。
アメリカ大統領選挙にまつわるアノマリーを利用することで、投資のパフォーマンスを改善できる可能性があります。本記事を参考に、試してみてはいかがでしょうか。
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